眼位の異常
斜視・・・ 両眼の視線が正しく目標に向かない状態。
すなわち眼位の異常に、両眼視の異常が加わったもの。
斜視 共同性斜視・・・眼球運動に異常がないもの。
麻痺性斜視・・・眼球運動に異常があるもの。
斜位・・・ 眼位の異常はあるが、両眼視の異常はない。(融像力>眼位のずれ)
斜視 斜位 上斜筋麻痺・下斜筋過動他 クリックすると説明に飛びます。
◆斜視◆
*原因*
遠視、眼筋、神経支配の異常、両眼視異常、視力障害による。
*種類*
眼位のずれている方向によって、次のように分けられる。
  右眼で見たとき 左眼で見たとき
内斜視     
外斜視     
左眼上斜視
(右眼下斜視)
    
右眼上斜視
(左眼下斜視)
    
交代性上斜位     
  ・恒常性斜視・・・常に斜視になっているもの。
  ・
間歇性斜視・・・斜視のときと斜視でないときとあるもの。

大島眼科(斜視・弱視・屈折)
↑のページで各斜視の目の状態が写真入りで説明されていてわかりやすいです。
ぎもんしつもん目の辞典
目の構造から斜視の種類、手術説明、検査の種類など詳しく説明されています。


*症状*
眼位がずれているほか、両眼視の異常がある。両眼視が円滑に行なわれない。
両眼の網膜の対応する位置にうつった像を一つにまとめて見ることができれば網膜対応が正常ということになるが、斜視のなかには、網膜対応が異常であるために、斜視をなおすと複視生ずる場合もある。
  *両眼視機能・・・両眼の網膜にうつった像を一つにまとめて見る融像、立体的に見る立体視

*治療*
1.屈折矯正・・・ 遠視が原因である調節性内斜視は、メガネ、コンタクトレンズで屈折矯正される。
2.手術・・・ 調節性内斜視以外の斜視の眼位矯正はすべて手術によって行なわれる。
斜視の手術には、後転法と前転法がある。たとえば、内斜視では内直筋の後転法か外直筋の前転法を行い、外斜視では外直筋の後転法か内直筋の前転法を行う。
 
*後転法・・・外眼筋の付着部を後方にずらす。筋肉の力は弱まる。
 *前転法・・・外眼筋を短縮して、付着部を前方にずらす。筋肉の力は強まる。

3.斜視視能矯正 手術によって眼位を矯正しても両眼視ができない場合に、両眼視機能回復のための矯正訓練が行なわれることがある。


◆斜位◆
*原因*
眼位の基本的なずれによるもので、潜伏斜視ともいう。
*種類*
斜視と同じように、内斜位・外斜位・上斜位・下斜位がある。
*症状*
両眼を開いて見ているときには、両眼の視線が集中しているが、もともとの眼の位置が完全に正しくないため、両眼を開いた瞬間には視線が目標に集中しない。

したがって、物体が二重に見えるので、融像をはたらかせ、視線を合わせて物体を一つに見る。
斜位の程度が強いと、融像の努力をいつも強くはたらかせる必要があるので、眼が疲労し、ときには融像を保つことが無理になって視線がずれ、物体が二重に見えるようになる。
*治療*
症状がなければ放置してさしつかえない。
程度が強く、症状があるときにはプリズム眼鏡を装用させる。


◆上斜筋麻痺・下斜筋過動など◆
眼筋

下斜筋・・動眼神経支配

上斜筋・・滑車神経支配
上斜筋は目を下に向かせる筋肉、下斜筋は上を向かせる筋肉になる。

《上斜筋麻痺》
上斜筋は目を下や内側に向ける作用を持っており、麻痺すると頭を傾ける症状(斜頚)で受診する事が多く反対側に傾けると上斜視が顕在化します。
両眼視を保つために斜頚しているので両眼視は良好な事が多いですが、未治療の状態では顔面の発達にも影響します。画像診断で、上斜筋の付着部や走向の異常が見つかる事があります。

《先天性上斜筋麻痺》

自然軽快の可能性は低いために手術を行う。(就学前までに行うことが多い)
両目でものをみようと頭を傾けて異常頭囲をとるために顔面や脊椎に発育異常をきたします。
また成人になってから上下斜視が慢性化し眼精疲労や肩凝りの原因となり手術することもあります。

上下斜視の原因としてもっとも頻度が高いのが上斜筋麻痺です。
先天性と後天性では臨床所見や訴えが異なり、治療方針や治療目標が異なってくる。
先天性上斜筋麻痺の治療は手術のみだが、後天性では自然治癒することもあり、プリズム療法などもある。

MRIをつかった画像診断により上斜筋が麻痺しているのか、そうでないか(付着部や走向の異常によるもの)を検討し、治療方針を検討することに役立つ。

≪下斜筋過動≫
眼には上下・左右・斜方向に2本ずつ計6本の筋肉が付着して眼を動かしています。
「下斜筋過動」は、眼を動かす筋肉の中の下斜筋という斜め方向の筋肉が働きすぎているという意味です。斜視としては、眼を内側に向けた時に、少し上方へずれてしまいます。
 ほかの斜視を合併せず、視力が良好なら基本的に心配なく、日常生活で気をつける点もありません。
ただ、自然に治るものではないので、治療方法としては手術になります。
 手術は、下斜筋の働き過ぎを緩和するために、下斜筋の眼球への付着部を切り離したり、切り離して場所を移動させてりします。眼球の中ではなく、眼球の外側に付く筋肉の手術ですから危険はありません。
 患者さんが小児ですので全身麻酔が必要です。現在の全身麻酔は大変安全ですが、手術は必要性が強い場合のみ行います。
 手術の必要性は、視力のほかに両眼で見る能力(立体感や奥行きなどを認知する能力)の発育が良好であるかが大変重要になります。
「下斜筋過動」だけの場合と、他の斜視が合併している場合ではかなり異なるので、専門医に検査を受け、手術の必要性を相談する事をお勧めします。料金は麻酔法や入院日数で違うので、手術を受ける病院で尋ねてみて下さい。

産経新聞より

参考文献:「系統看護学講座17 成人看護学Z 眼疾患」医学書院より